「職場のおやつ」で仕事の効率アップ、会議にも有効
暑くて集中力が落ちるこの時期、つい、おやつに手を伸ばしてしまう人もいるだろう。最近は禁煙ブームもあって、女性だけでなく、男性もおやつをよく食べるという。おやつには意外な効果もある。職場でのおやつを、健康づくりや仕事の効率向上に役立てる知恵について調べてみた。

健康面にはマイナスのイメージがあるおやつ。だが、「むしろ積極的に食べては」と、栄養コンサルタント会社、フードコネクション(東京都新宿区)代表取締役で管理栄養士の橋本玲子さんはいう。「最近はメタボ予防に励むあまり、必要なエネルギーやビタミン、ミネラルをちゃんと取れていない人もいる。おやつは大切な『補食』だ」
仕事の能率アップにもおやつが有効。アスリートの栄養指導を務めるOffice LAC-U(横浜市)代表の石川三知さんは「お菓子の味や香りが脳を刺激してくれる。ここ一番というとき、ひと仕事終え、次の作業に取り掛かるとき、おやつタイムを活用して」という。
暑い夏は集中力が落ちがちだが、そんなとき食べるといいのがレーズンなどのドライフルーツ。脳に必要なブドウ糖を素早く補給でき、ミネラルや食物繊維も豊富。日持ちもする。色とりどりのドライフルーツをビンに入れておけば、見た目にも楽しい。「バナナやフルーツゼリーもお勧め。ストレスがたまったと感じるときはチョコレートをつまむといい」(橋本さん)

おやつによっては夏バテ解消効果も期待できる。橋本さんのいちおしは南部せんべいだ。「疲労回復に必要なエネルギー、糖質、ビタミンB1をバランスよく含んでいる」。食べるときの音もそれほど大きくない。「食欲のないときは、のど越しがよく水分補給できる水ようかんもいい」
おやつは会議にも有効だ。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会会長の徳田太郎さんは「テーブルの真ん中に置くと、みんなが同じところに手を伸ばすことで心理的な距離感が近くなる」という。
議論が行き詰まったとき、タイミングを見計らって出すのもいい。「こわもての上司がいる」など、緊張しがちな会議では棒つきキャンディーを出すと場が和みそうだ。
ただし、仕事中のダラダラ食いは禁物だ。できるだけ時間を決めて食べよう。橋本さんのお勧めは小腹の空いてくる午後3時か4時頃。「昼食前に食べると太りやすいので避けて」と石川さん。
適量も守りたい。めやすは1日に必要なエネルギーの10%程度。袋菓子は小皿などに取り分けると、食べ過ぎを防げる。「肥満を気にする人の場合、菓子パンを食べるなら脂質の少ないアンパンやジャムパンがお勧め」(橋本さん)
ただ、飲み会の日はお酒のカロリーを考え、おやつは控えめに。また、この時期はお土産のお菓子を口にする機会も増えるが、石川さんは「糖分を摂りすぎるとカルシウム不足になりやすい。小魚、ナッツを積極的に食べては」と提案する。
マナーにも配慮しよう。人財育成コンサルタントの美月あきこさんは、「音のするものや匂いの強いものは人のいる場所では控える。お土産などをいただいた場合、同僚より先に食べる人は、『お先にいただきます』と声かけをしてから静かに食べて」と助言する。
食べたくないときにお菓子が出されたら、「自宅でゆっくりいただきます」「歯が痛いので後日いただきます」などと言って持ち帰る。「ダイエット中なので」という発言は好印象ではないので要注意だ。訪問先で振る舞われた際は残さないのが原則だが、食べきれなかった場合は、懐紙で包んで持ち帰ろう。
おやつはビジネスシーンにおける潤滑油。お菓子を通して日ごろの感謝を伝え合い、産地やお店のネタなどで、会話をおおいに盛りあげよう。
(ライター 西川 敦子)
[日経プラスワン2011年8月27日付]